コラム|被害回復

仮想通貨詐欺のお金は戻ってくる?返金の仕組みと現実

公開日:

結論

仮想通貨詐欺でだまし取られたお金が戻る公的な仕組みはありますが、戻る保証はなく、「返金確率」を示す公式の統計もありません。銀行振込で払った分は振り込め詐欺救済法の対象ですが、戻るのは振込先の口座に残っていたお金の範囲に限られます。

暗号資産で送った分は、この救済法の対象として定められていません。回復の出発点は、警察が送金先の取引所に照会し、凍結などを求めることです。被害者が自分で取引所に「凍結してほしい」と頼んでも、それだけで凍結されることはありません。まずは送金のTXIDを控え、お金がどこへ送られたのかを突き止めておくことが出発点です。

「送ってしまったお金は、どのくらいの確率で戻ってくるのか」——被害に遭った人がまず知りたいことです。検索すると「返金率〇〇%」といった数字も目に入りますが、その多くは根拠が示されていません。この記事では、公的な制度と統計をもとに、何がどこまで戻る可能性があるのか、そして被害者が自分でできることとできないことを、正直にまとめます。

仮想通貨詐欺の被害はどれくらい起きている?

警察庁によると、2025年(令和7年)のSNS型投資詐欺は9,523件、被害額は約1,288.0億円でした。被害金の渡し方で分けると、次のようになります。

SNS型投資詐欺の被害(2025年、警察庁の統計より)
被害金の渡し方件数被害額
振込型7,135件約1,000.6億円
暗号資産送信型1,898件(件数の19.9%)約215.5億円
全体9,523件約1,288.0億円

被害金の渡し方にはほかの方法もあるため、振込型と暗号資産送信型を足しても全体とは一致しません。被害額のうちどれだけが被害者に戻ったかという数字は、警察庁の統計には載っていません。「返金確率」「返金率」を示す公式の統計は、見当たりませんでした。

仮想通貨詐欺で、銀行振込で払った分は戻る?

銀行振込で払った分は、振り込め詐欺救済法の対象になります。金融庁は、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺でも、預金口座への振込みで被害にあった場合は対象になると説明しています。手続きの流れは次のとおりです。

  1. 被害者が、まず警察に、その後すぐに振込先の金融機関に連絡する
  2. 犯罪に使われた疑いがあると判断されると、振込先の口座が凍結される
  3. 預金保険機構が、口座の権利を消す手続きの開始を公告する(口座名義人が権利を届け出る期間は60日)
  4. 権利が消えた口座について、被害回復分配金の支払手続きの開始を公告する(被害者が申請する期間は90日)
  5. 金融機関が審査し、被害者に分配金を支払う
戻るのは「口座に残っていたお金」の範囲まで分配金の原資は、凍結した時点で振込先の口座に残っていたお金です。詐欺グループはお金をすぐに別の口座へ移すことが多く、残高がわずかだと、被害額の一部しか戻りません。残高が1,000円未満の口座は分配の対象外です。被害に気づいたら、1日でも早く振込先の金融機関に連絡することが大切です。
振り込め詐欺救済法の実績(預金保険機構、令和7年度)
項目令和7年度令和6年度
権利を消す手続きを始めた口座74,478口座(約147.1億円)59,644口座(約107.8億円)
支払手続きを終えた口座の残高の総額約73.6億円約56.0億円
被害者への支払総額約60.3億円約49.1億円

預金保険機構は、令和7年度の「支払率」を82.0%と公表しています。これは、支払手続きを終えた口座の残高(約73.6億円)のうち、被害者に支払われた割合です。被害額全体に対して何%戻ったかという意味ではありません。「返金率82%」と読むと、実態を大きく誤解することになります。

仮想通貨詐欺で、暗号資産を送った分は戻る?

振り込め詐欺救済法の対象は「預金口座等への振込み」と定められており、暗号資産を送った分は、この制度の対象として定められていません。暗号資産で送った場合に回復につながる可能性があるのは、主に次の道です。どれも、警察などの捜査機関や裁判所の手続きを通じて進むもので、被害者が直接取引所に働きかけて進めるものではありません。

暗号資産で送った被害の回復につながる主な仕組み
仕組み内容限界
警察を通じた取引所への照会・凍結被害の相談を受けた警察が、送金先の取引所に照会し、口座の凍結などを求める。取引所も、疑わしい取引を検知すると取引制限や口座凍結の措置をとることがある。警察庁と金融庁は2026年8月、こうした措置の迅速化と警察との連携の強化を交換業者に要請した資金の流れと、最終的な送金先の取引所が分かっていることが前提。協力しない海外の取引所もある
没収保全・没収捜査機関の請求で裁判所が犯罪収益の処分を禁じ、刑事裁判で没収する。2020年8月には、東京地裁がコインチェックのNEM流出事件に関連して、被告が国内の交換所に預けていた暗号資産(当時のレートで約480万円相当)に没収保全命令を出したと報じられた(暗号資産への命令は国内初とみられる)犯人の特定と刑事手続きが必要。本人しか動かせないウォレットにある場合は難しい
民事の手続き相手や口座が特定できれば、損害賠償を求める手続きがとれる相手が海外にいる、正体が分からない場合は難しい
送金先の取引所に、自分で「凍結してほしい」と頼んでも凍結されません取引所が口座を凍結するのは、自社の審査で疑わしい取引を見つけた場合か、捜査機関などからの法的な手続きにもとづく場合です。米国FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)も、取引所が口座を凍結するのは社内の手続きか法的な手続きによる場合だけだと説明しています。被害者が取引所に連絡しても、それだけで相手の口座が凍結されたり、相手の情報が開示されたりすることはありません。被害者にできるのは、送金のTXIDと送金先のアドレスを控え、お金がどこへ送られたのかを把握しておくことです。

犯罪収益を押さえる手続き自体は、実際に使われています。警察白書によると、2024年(令和6年)に出された起訴前の没収保全命令は、組織的犯罪処罰法にもとづくものだけで225件(詐欺などを含む)でした。ただし、そのうち暗号資産の詐欺被害がどれだけ被害者に戻ったかは公表されていません。

仮想通貨詐欺でお金が戻るかどうかは、何で決まる?

ここまでの制度を並べると、回復の可能性を左右する要素は、おおむね次の4つに整理できます。

回復の可能性を左右する主な要素
要素回復につながりやすい状況難しくなる状況
払い方銀行振込(振り込め詐欺救済法の対象)暗号資産の送付、現金の手渡し
時間被害に気づいてすぐ、金融機関に連絡した時間がたち、お金が別の口座やアドレスに移された
お金の行き先国内の銀行口座や、国内の交換業者の口座に届いている本人しか動かせないウォレットや、協力しない海外の取引所に移っている
犯人検挙され、刑事手続きが進んだ海外にいる、正体が分からない

このうち被害者が自分で変えられるのは「時間」と「記録」です。暗号資産の場合は、送金のトランザクションID(TXID)が分かれば、お金の行き先をブロックチェーン上でたどれます。行き先が取引所の口座だと分かれば、その情報を警察に伝えることで、警察から取引所への照会につなげられます。調べる仕組みはこちらのガイドで解説しています。

仮想通貨詐欺の「返金確率〇〇%」「必ず取り戻せる」という広告は信じていい?

信じないでください。上で見たとおり、仮想通貨詐欺の返金確率を示す公式の統計はありません。金融庁は、一度送金すると被害の回復はかなり難しいとしたうえで、「回復できる」と持ちかける勧誘が二次被害につながるおそれがあると警告しています。日本暗号資産等取引業協会も、暗号資産の送金は多くの場合取り消せず、「回収できる」という連絡は二次被害の可能性があると注意を呼びかけています。

民間の業者が、取引所に口座の凍結を命じたり、裁判所の命令なしに暗号資産を差し押さえたりすることはできません。「凍結できる」「取り戻せる」と約束する業者の見分け方は、仮想通貨詐欺の二次被害の記事にまとめています。

仮想通貨詐欺のお金が戻る可能性を残すために、今すぐやることは?

  1. 追加の送金をやめる。「税金」「手数料」「保証金」を払っても出金できることはありません
  2. 銀行振込で払った分は、すぐに振込先の金融機関に連絡する
  3. 暗号資産で送った分は、送金のTXIDと送金先のアドレスを控える(TXIDの確認方法)。送金先の取引所に自分で凍結を頼んでも、それだけでは凍結されない
  4. 相手とのやり取り、サイトのURL、入金の記録を保存する
  5. お金がどこへ送られたのかを調べる(送金先の調べ方)
送金先を調べたい方は、LINEでご相談ください

送金のTXIDや送金先のアドレス、やり取りの画面があれば、お金がどこへ送られたのかを調べられるかどうか、LINEでお答えします。「何を残せばいいか分からない」「TXIDの探し方が分からない」という段階でも構いません。

LINEで相談する(無料)

友だち追加のみで、こちらから電話をかけることはありません。ご相談は無料ですが、資金の回収・返金をお約束するものではありません。

仮想通貨詐欺の返金に関するよくある質問

仮想通貨詐欺の返金確率はどれくらいですか?

公式の統計はありません。警察庁の統計には被害額は載っていますが、そのうちどれだけが戻ったかは公表されていません。「返金率〇〇%」とうたう広告の数字は、根拠が示されていないことがほとんどです。

送金先の取引所に連絡すれば、相手の口座を凍結してもらえますか?

被害者が連絡しただけでは凍結されません。取引所が口座を凍結するのは、自社の審査で疑わしい取引を見つけた場合か、捜査機関などからの法的な手続きにもとづく場合です。送金のTXIDと送金先のアドレスを控えておいてください。

振り込め詐欺救済法の支払率82%は、被害額の82%が戻るという意味ですか?

違います。預金保険機構が公表した令和7年度の支払率82.0%は、支払手続きを終えた口座に残っていたお金(約73.6億円)のうち、被害者に支払われた割合です。被害額全体に対する割合ではありません。

暗号資産で送ったお金も振り込め詐欺救済法で戻りますか?

振り込め詐欺救済法の対象は預金口座等への振込みと定められており、暗号資産を送った分は対象として定められていません。資金の流れを突き止め、警察が取引所に照会や凍結を求めることが回復の出発点になります。

執筆・監修

小野田泰久

株式会社ベスト 代表取締役 / CryptoTracer 運営責任者

仮想通貨(暗号資産)詐欺の送金先追跡調査に従事。 本記事の内容は、公開されているブロックチェーン情報と、 実際の調査で確認した送金経路の傾向にもとづいて記載しています。 資金の回収・返金や、送金先の持ち主の氏名・住所の特定は行っていません。
運営者情報・調査の方針を見る

送金先の追跡を相談・依頼する

トランザクションハッシュと送金先アドレスがあれば、オンラインで調査を依頼できます。1件¥9,800、最短翌日。 申し込む前に、自分のケースが調査できるかをLINEで相談することもできます(相談は無料です)。