仮想通貨詐欺コラム|手口

ニセ警察詐欺で暗号資産を送らせる手口とは?警察庁と県警の公表事例

公開日:

結論

捜査や「無実の証明」を名目に、警察官や検事を名乗る相手から暗号資産を買って送るよう求められたら、ニセ警察詐欺です。警察官が電話やSNSで捜査を名目にお金を要求することはない、と山形県の協議会も呼びかけています。警察庁によると、ニセ警察詐欺は令和7年(2025年)に11,014件・被害額1,005.0億円で、特殊詐欺の被害額の7割(70.6%)を占めました。令和8年も8月末までの暫定値で6,346件・728.6億円です。

富山県警察と山形県の協議会が公表した事例では、「トランザクションIDが一致するか確認する」「口座のお金を調べる」と言って、暗号資産のアプリを入れさせ、購入させ、指定のアドレスへ送らせていました。庄内警察署は、振込や出金の手続きを避けて、銀行や警察に気づかれないようにする手口だと説明しています。

「あなたの口座が、資金洗浄に使われている」「無実を証明するには、暗号資産で取引をしてもらう必要がある」——警察官を名乗る電話から、暗号資産を買わせて送らせる事例を、県警などが公表しています。この記事では、警察庁の統計と、県警などが公表した事例の原文をもとに、ニセ警察詐欺で暗号資産が使われる流れと、本物の警察との見分け方を整理します。

ニセ警察詐欺とは?被害はどのくらい出ている?

警察庁は、ニセ警察詐欺を、「警察官等をかたり、捜査(優先調査)名目で現金等をだまし取る手口」と定めています。統計は令和7年(2025年)から取り始め、令和8年からは特殊詐欺の中の独立した手口として扱っています。警察庁は、令和6年後半ごろから被害の増加が目立ち、令和7年の特殊詐欺の被害が大きく増えた主な原因だとしています。

ニセ警察詐欺の被害(警察庁の公表値)
期間認知件数被害額補足
令和7年(確定値)11,014件1,005.0億円特殊詐欺全体の件数の39.6%、被害額の70.6%
令和8年1〜8月(暫定値)6,346件728.6億円前年同期比で件数は−4.1%、被害額は+27.0%

令和7年の確定値では、ニセ警察詐欺の既遂1件当たりの被害額は922.5万円で、ニセ警察詐欺を除いた特殊詐欺(256.7万円)の3倍以上でした。被害に遭った人は30代(2,239件)が最も多く、次が20代(1,718件)で、若い世代にも広がっています。一方、被害額は70代(274.6億円)、60代(256.3億円)が大きくなっています。

ニセ警察詐欺で、暗号資産はどう使われる?

県警などが公表した事例では、次のような流れで暗号資産を送らせていました(当社が原文から要約しました。名乗った人物の名前は書きません)。

公表された事例に見る、ニセ警察詐欺の流れ
段階言われたこと・させられたこと出典
最初の連絡SMSで「お伝えが必要な内容があります」。書かれた番号に電話すると、「警視庁」を名乗る相手が「あなたの口座が詐欺で不正利用されている」と言う富山県警察
別の役所から警察へ「厚生労働省保険局」を名乗る男が「保険証が使われている」→警察署を名乗る男に代わり、さらに警察官が「口座が資金洗浄に使われている可能性がある」山形県の協議会
口止め「この捜査は、家族にも話してはいけない」富山県警察
暗号資産を買わせる「無実の証明には、実際にあなたの携帯電話で暗号資産の取引をし、トランザクションIDが一致するか確認する必要がある」→アプリを入れて購入し、指定のアドレスへ3回送金富山県警察
検事の指示で送る「検事」を名乗る男らの指示で、暗号資産を合計12回(約6,315万円)送金し、現金も2回振り込んだ山形県の協議会
ネットバンク経由ネットバンクの口座を開設させ、資産を全額移させたうえで暗号資産を購入させ、パスワードを聞き出す庄内警察署

山形県の事例では、被害者は「このままでは自分が犯罪者になる」と思って指示に従い、相手と連絡が取れなくなった後、テレビで似た手口が紹介されたのを見て、被害に気づいたと書かれています。富山県の事例では、親族に話したことで気づいています。「家族にも話すな」という口止めは、この「気づくきっかけ」を断つためのものです。

なぜ、現金ではなく暗号資産に替えさせる?

庄内警察署は、これまでの手口(現金を引き出させて受け取る、口座に振り込ませる)は、警察が金融機関に協力を求めて、出金や振込の前に食い止めていたと書いています。そのうえで、新しい手口について、「犯人側が警察や金融機関に犯罪を察知させないために、振込や出金という手続きを取らないようにした」と説明しています。

警察庁の確定値でも、令和7年の特殊詐欺(この年の集計は、SNS型投資・ロマンス詐欺を含みません)のうち、暗号資産を送らせる「暗号資産送信型」は1,243件・196.9億円で、件数は前年の約10倍(+927.3%)、被害額は約5.8倍(+479.4%)に増えました。暗号資産交換業者の口座へ振り込ませた628件・80.3億円と合わせると、実質的に暗号資産で渡ったものは、件数の6.7%、被害額の19.5%です。ただし、この資料では、ニセ警察詐欺だけの暗号資産の内訳は公表されていません。

金融庁と警察庁は、2026年8月6日、「特殊詐欺の被害金が暗号資産交換業者の口座宛てに送金される事例が発生している」として、日本暗号資産等取引業協会に、対策の強化を連名で要請しました。要請には、入金後・購入後の一定期間の出庫(送り出し)制限、送り先の事前登録制、送金した人の名前と口座の名義の一致確認などが含まれています。

本物の警察か、どう見分ける?

警察庁は、「警察は以下の事項をすることはありません」として、次の4つを挙げています。

警察庁は、実在の警察本部の代表番号を偽って表示させる手口も確認しています。「+」から始まる国際番号でも、末尾が「0110」の番号を使って警察署からの電話に見せかける例が目立つ、としています。画面に本物の番号が出ていても、本物とは限りません。警察庁は、相手から教えられた番号には決して折り返さないよう呼びかけています。山形県の協議会も、警察官が電話やSNSで、捜査を名目に現金を要求することはないと書いています。

⚠ 当社の見解「無実を証明するために、暗号資産を買って送って」「資金を調べるので、いったん全額を移して」は、どちらも詐欺の言葉です。TXID(トランザクションID)は、暗号資産を送ったときに記録される番号で、あなたが暗号資産を送っても、口座の潔白が証明されることはありません。送った暗号資産は、相手の管理するアドレスに移るだけです。TXIDの本来の意味はTXIDの確認方法で説明しています。

取引所から「送金の目的」を聞かれたら?

上の要請を受けて、取引所が、送金の目的を確かめたり、入金や購入の直後の送り出しを一定期間止めたりすることがあります。ニセ警察詐欺の犯人は、「捜査の秘密なので、誰にも言うな」と口止めすることがあります。取引所や銀行の窓口から確認されたら、警察を名乗る人から指示されていることを、そのまま伝えてください。取引所の確認は、あなたの資産を守るための手続きです。

この記事で確認できなかった点は?

ニセ警察詐欺で暗号資産を送ってしまったら?

  1. 相手との電話・ビデオ通話を切り、それ以上の購入・送金をしない。「途中でやめると逮捕される」と言われても、従わない
  2. 家族に話す。「誰にも言うな」という口止めは、詐欺の手口です
  3. SMS、通話の記録、送られてきた「警察手帳」「逮捕状」の画像、相手のアカウント名を、削除せずに保存する
  4. 暗号資産で送った場合は、送金のTXIDと送金先のアドレスを控える(TXIDの確認方法)。銀行振込で払った場合は、振込先の金融機関にすぐ連絡する
  5. 使った取引所に、詐欺の被害に遭ったことを連絡する。後から「取り戻せる」と連絡してくる相手には注意してください(二次被害の記事)
送金先を調べたい方は、LINEでご相談ください

送金のTXIDや送金先のアドレス、やり取りの画面があれば、お金がどこへ送られたのかを調べられるかどうか、LINEでお答えします。「何を残せばいいか分からない」「TXIDの探し方が分からない」という段階でも構いません。

LINEで無料相談

友だち追加のみで、こちらから電話をかけることはありません。ご相談は無料ですが、資金の回収・返金をお約束するものではありません。

送った暗号資産がどこへ移ったかは、ブロックチェーンの公開記録で確かめられることがあります。お金が戻る仕組みと現実は、仮想通貨詐欺のお金は戻ってくる?にまとめています。

参考

2026年11月3日時点の公開情報にもとづいています。事例は公表資料を当社が要約したもので、犯人が名乗った名前は省きました。

ニセ警察詐欺と暗号資産に関するよくある質問

警察官から「無実を証明するために暗号資産を送って」と言われました。本物ですか?

本物ではありません。警察庁は、警察がSNSで連絡したり、ビデオ通話で取調べをしたり、逮捕状の画像を送ったりすることはないとしています。暗号資産を送っても潔白の証明にはならず、相手のアドレスに移るだけです。電話を切り、家族に話してください。

着信画面に、実在の警察署の番号が表示されていました。それでも詐欺ですか?

詐欺の可能性があります。警察庁は、実在の警察本部の代表番号を偽って表示させる手口や、末尾が0110の国際電話番号を使う例を確認しています。表示された番号だけで本物と判断せず、相手から教えられた番号には折り返さないでください。

ニセ警察詐欺の被害は、どのくらい出ていますか?

警察庁の確定値で、令和7年は11,014件・被害額1,005.0億円で、特殊詐欺の被害額の70.6%を占めました。令和8年も8月末までの暫定値で6,346件・728.6億円です。被害者は30代が最も多く、若い世代にも広がっています。

ニセ警察詐欺で送った暗号資産は、追跡できますか?

暗号資産の送金はブロックチェーンに記録されるため、送り先のアドレスから先の流れを公開情報で確かめられることがあります。送金のTXIDと送金先のアドレスを控えておいてください。返金を約束できるものではないため、「必ず取り戻せる」という業者には注意してください。

執筆・監修

小野田泰久

株式会社ベスト 代表取締役 / CryptoTracer 運営責任者

仮想通貨(暗号資産)詐欺の送金先追跡調査に従事。 本記事の内容は、公開されているブロックチェーン情報と、 実際の調査で確認した送金経路の傾向にもとづいて記載しています。 資金の回収・返金や、送金先の持ち主の氏名・住所の特定は行っていません。
運営者情報・調査の方針を見る

送金先の追跡を相談・依頼する

トランザクションハッシュと送金先アドレスがあれば、オンラインで調査を依頼できます。1件¥9,800、最短翌日。 申し込む前に、自分のケースが調査できるかをLINEで相談することもできます(相談は無料です)。

調査の仕組みと料金は、仮想通貨詐欺の調査会社「CryptoTracer」のサービス紹介で詳しくご覧いただけます。