ラグプル詐欺とは?ミームコインやDEXのトークンが売れない仕組み
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ラグプルとは、トークンを発行した側や内部の者が、取引所(DEX)の流動性プールから資金を一気に引き抜き、買った人に損失を負わせる行為です。アメリカのSECは2025年1月、「流動性はロックされている」とSNSで説明されていたトークンで、ロックされていなかった権利を使って流動性が抜かれ、約55万3,000ドル相当が不正に取られたとして訴えを起こしました。
ミームコインについて、SECの担当部局は、買った人も持っている人も連邦証券法の保護を受けないとの見解を出しています。日本の金融庁も、登録業者が扱う暗号資産でさえ「価値を保証したり、推奨するものではありません」と注記しています。DEXで買えるだけの新しいトークンは、金融庁の確認も経ていません。
「SNSで話題のミームコインを買ったら、翌日に価格がほぼゼロになり、売ろうとしても売れない」——DEX(分散型取引所)で売買されるトークンでは、こうした「ラグプル」が起きます。この記事では、アメリカのSEC・CFTCの公表資料と、金融庁の登録一覧の注記を当社が直接確かめて、仕組みと見分けるときの注意を整理します。
ラグプル詐欺とは、何?
「ラグプル(rug pull)」は、足元の敷物を引き抜く、という意味の言葉です。SECは2025年1月16日の公表資料で、DEXで使われる流動性プールの仕組みを次のように説明しています(英語の原文を当社が要約しました)。なお、SECは、この事例のトークンを「証券として売られたもの」として扱っています。
- 流動性プールに、暗号資産のペア(流動性)を預けた人は、「LPトークン」を受け取る
- 安全のための仕組みがなければ、LPトークンを持つ人は、予告なしにプールから流動性を引き出し、プールに大量の暗号資産を売り込んで、投資家に損失を与えることができる
- こうした取引は、暗号資産の業界で「ラグプル」と呼ばれている
日本の金融庁・消費者庁・国民生活センター・警察庁の資料で、「ラグプル」という言葉を使って説明したものは、当社の調べた範囲では見当たりませんでした。この記事の定義は、SECの説明にもとづいています。
なぜ、ラグプルのあとトークンが売れなくなる?
DEXでは、トークンを売るとき、流動性プールに入っている相手側の資産(イーサリアムやステーブルコインなど)と交換します。SECの説明をもとに当社が整理すると、ラグプルで流動性が引き抜かれると、プールに相手側の資産がほとんど残らないため、売ろうとしても、ほとんど何とも交換できなくなります。画面にはトークンの残高が残っていても、それを価値のあるものに換える先がない状態です。
SECが訴えた事例では、ラグプルのあと、トークンの価格は約12%下がったとされています。被害の大きさは、流動性の量や売られた量によって変わります。
「流動性はロック済み」と言われたら、安全?
SECの事例では、発行側が、SNSで「流動性はロックされている」と説明していました。SECによると、これは業界の言い方で、LPトークンがロックされていて、発行者や内部の者が流動性を引き出せない、という意味に受け取られるものです。
ところが、SECの訴えでは、トークンの発行の仕組みの中で、一部のLPトークンが、コーディングを請け負った技術者だけが管理するアドレスにたまり、ロックされないまま残っていたとされています。技術者はそれを使ってラグプルを行い、約55万3,000ドル相当の暗号資産を不正に取ったとSECは主張しています。技術者は認否をしないまま、利益の返還と利息あわせて672,992ドル、民事制裁金150,000ドルの支払いに同意しました(裁判所の承認が条件)。
ミームコインは、法律で守られる?
SECの企業財務局は、2025年2月27日に「ミームコインについてのスタッフの見解」を出しました。要点は次のとおりです(英語の原文を当社が要約しました)。なお、SECは、この事例のトークンを「証券として売られたもの」として扱っています。
| 項目 | SECのスタッフの説明 |
|---|---|
| ミームコインとは | ネットのミーム、キャラクター、時事、流行に着想を得た暗号資産。用途や機能は限られるか、ない |
| 価値の決まり方 | 主に市場の需要と投機で決まり、値動きが大きい。買った人は、払ったお金をすべて失うこともある |
| 証券かどうか | 見解で述べる類型のミームコインの取引は、証券の募集・売出しに当たらない(個別のコインの判断ではない) |
| 購入者の保護 | 買った人も持っている人も、連邦証券法の保護を受けない |
| 詐欺の扱い | ミームコインの販売に関わる詐欺は、ほかの連邦・州の機関による処分や訴追の対象になりうる |
日本の金融庁は、「暗号資産交換業者登録一覧」(令和8年9月30日現在)で、登録業者が扱う暗号資産は、業者の説明にもとづき資金決済法上の定義に当てはまることを確認したものにすぎず、「金融庁・財務局が、これらの暗号資産の価値を保証したり、推奨するものではありません」と注記しています。登録業者が扱っていない、DEXで買えるだけのトークンは、この確認すら経ていません。
ミームコイン・草コインの詐欺を、どう見分ける?
アメリカのCFTC(商品先物取引委員会)は、2018年に、取引の少ない新しい暗号資産やトークンで、偽の需要を作って値をつり上げ(pump)、すぐに売り抜ける(dump)手口に注意を呼びかけています。こうした集まりは匿名のことが多く、公開のチャットやメッセージアプリで組織されるとし、次のように勧めています(英語の原文を当社が要約しました)。なお、SECは、この事例のトークンを「証券として売られたもの」として扱っています。
- SNSで共有された情報や、急な値上がりを理由に買わない
- よく調べた暗号資産・トークンだけを買い、うわさと事実を分ける
- こうした手口は、数分で終わることもあると知っておく
- 将来の価値の約束や保証は「危険信号(red flag)」と考える(2018年7月の注意喚起)
- トークンと、売っている人の両方を調べる。売り手の情報が見つけにくければ警戒する
「上場すれば何倍にもなる」と先に売りつける勧誘は、上場前の仮想通貨の記事で、DEXのサイトに「ウォレットを接続して」と誘う手口は、ウォレット接続の記事で詳しく書いています。
ラグプル詐欺について確認できなかった点は?
- 日本の公的機関が「ラグプル」を定義・注意喚起した資料(当社の検索では見つかりませんでした)
- アメリカ司法省のNFTのラグプルの起訴の資料(ページがボット対策の画面になり、本文を確認できませんでした)
- 「買えるが売れない」ように作られたトークン(いわゆるハニーポット)についての、公的機関の説明
- 日本でのラグプルの被害件数・被害額
トークンが売れない・価格が急落したら?
- 「売るには手数料が必要」「ロック解除のために追加で入金を」と言われても、送金しない
- トークンを紹介したSNSの投稿、グループチャット、購入したサイトの画面を、削除せず画像で保存する
- 購入の取引のTXID、使ったウォレットのアドレス、トークンのコントラクトアドレスを控える(TXIDの確認方法)
- 購入のときにサイトへウォレットを接続していたなら、承認の取り消しを、ウォレットの公式の案内に沿って確かめる(ウォレット接続の記事)
- 「取り戻せる」と後から連絡してくる相手に注意する(二次被害の記事)
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- SEC Litigation Release No. 26223「SEC Charges New York Blockchain Engineer with Perpetrating "Rug Pull" Fraud」 — 2025年1月16日。流動性プールとラグプルの説明、訴えの内容(英語)。2026年11月3日確認
- SEC「Staff Statement on Meme Coins」 — 2025年2月27日(企業財務局)。ミームコインの定義と保護の範囲(英語)。2026年11月3日確認
- CFTC「CFTC Issues First Pump-and-Dump Virtual Currency Customer Protection Advisory」 — 2018年2月15日。値のつり上げと売り抜け(英語)。2026年11月3日確認
- CFTC「CFTC Staff Issues Customer Advisory on Digital Tokens」 — 2018年7月16日。将来の価値の約束は危険信号(英語)。2026年11月3日確認
- 金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」 — 令和8年9月30日現在。取り扱う暗号資産についての注記。2026年11月3日確認
2026年11月3日時点の公開情報にもとづいています。英語の原文は、当社が日本語に要約しました。SECの事例の当事者の名前とトークンの名前、個別のミームコインの名前は扱っていません。SECの訴えの内容は、SECの主張です。
ラグプル詐欺・ミームコインに関するよくある質問
ラグプル詐欺とは、何ですか?
DEXの流動性プールから、発行側や内部の者が資金を一気に引き抜き、トークンを買った人に損失を負わせる行為です。アメリカのSECは、LPトークンを持つ人が予告なしに流動性を引き出し、大量に売り込んで投資家に損失を与える取引を、業界でラグプルと呼ぶと説明しています。
「流動性はロック済み」と書かれていれば、安心ですか?
安心とは言えません。SECが2025年に訴えた事例では、SNSで流動性はロックされていると説明されていたのに、一部のLPトークンが技術者のアドレスにロックされないまま残り、ラグプルに使われたとされています。ふつうの購入者が、ロックの中身を確かめるのは難しいものです。
ミームコインで損をしたら、法律で守られますか?
アメリカでは、SECのスタッフが、ミームコインを買った人も持っている人も連邦証券法の保護を受けないとの見解を出しています。ただし、販売に関わる詐欺は、ほかの機関による処分や訴追の対象になりうるとしています。日本の金融庁も、登録業者が扱う暗号資産でさえ価値を保証しないと注記しています。
トークンが売れません。「手数料を払えば売れる」と言われました。
追加の送金はしないでください。当社の考えでは、流動性が抜かれたトークンは、手数料を払っても売れるようにはなりません。SNSの投稿や購入した画面を保存し、購入の取引のTXIDとトークンのコントラクトアドレスを控えてください。
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