IPOの「特別枠」詐欺とは?高速取引行為者の名を使った12件の手口
公開日:
「IPO株の特別枠を確保できる」「プロの投資家だけの口座」と持ちかけて入金させる詐欺が、実在する会社の名前を使って行われています。金融庁の無登録業者リストには、実在の高速取引行為者の名前を詐称した警告が12件(令和7年10月〜令和8年7月)載っており、そのうち11件の備考に「IPO銘柄の配分に関与している」という虚偽の説明があったと書かれています。
高速取引行為者は、IPO銘柄の配分に関与できません。また関東財務局は、高速取引行為者が日本国内の一般の方に投資勧誘を行うこと自体が法令上認められていないと書いています。IPOの「特別枠」「優先割当」と言われたら、その時点で本物ではありません。名前を使われた会社は被害を受けた側です。
「IPO株を優先的に買える」「機関投資家だけの特別な口座がある」「応募枠に当選したので入金してください」——聞こえのよい話ほど、確かめる前にお金を動かしてしまいます。この記事では、金融庁の警告の一覧と注意喚起を当社が直接確かめて、手口の共通点を整理します。
この記事に出てくる業者名・サービス名が、金融庁の警告に載っているかどうかは、金融庁の警告業者を検索できるページで確かめられます。
金融庁は、IPOの「特別枠」の手口をどう示している?
金融庁の注意喚起「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」には、次の手口が載っています。当社が2026年10月7日に、公式のページを開いて確認しました。
| 手口の名前 | 書かれていること |
|---|---|
| 高速取引行為者(HFT業者)を騙っている事例 | 高速取引行為者は投資勧誘を行うことができないのに、実在の高速取引行為者の名称を騙って、IPO銘柄の取引勧誘を行っている |
| 特別待遇されていると思わせる事例 | プロ投資家向けの口座など、選ばれた人だけの口座が特別に使えると謳って勧誘する。プロ投資家向けの運用手法を特別に提供すると偽る |
| IPOの応募枠をめぐる事例 | 新規公開株式(IPO)等について、身に覚えのない応募枠に当選したとして入金させる。または、特別な応募枠があると誘い、応募させたうえで当選したと偽って入金させる |
| 金融商品取引業者を騙っている事例 | 既存の金融商品取引業者の名前やそれらしい名前を使って信用させ、特定の口座への入金を要求する。登録番号を詐称する。偽のウェブサイトへ誘導する |
共通しているのは、「選ばれた人だけ」「特別枠」と思わせて、先に入金させる流れです。入金したあとに、利益が出ているように見せて、さらに追加の入金を求める流れは、LINEの投資グループの記事にも書いています。
高速取引行為者を名乗る警告は、金融庁のリストにいくつある?
12件です。当社が金融庁の無登録業者リスト(令和8年9月25日更新)を確認したところ、商号欄が「不明(高速取引行為者〇〇の商号等を詐称)」となっている警告が、令和7年10月から令和8年7月までに、次のとおり載っていました。
| 掲載の時期 | 件数 | 名前を使われた高速取引行為者(被害を受けた側) |
|---|---|---|
| 令和7年10月 | 2件 | HRT SG PTE. LTD. / Headlands Technologies LLC |
| 令和7年11月 | 5件 | Virtu Financial Singapore Pte. Ltd. / Scientech Research LLC / PDT Partners, LLC / Nine Mile Financial Pty. Ltd. / Issar Limited |
| 令和7年12月 | 3件 | Two Sigma Securities, LLC / Optiver Australia Pty Limited / Eagle Seven LLC |
| 令和8年4月 | 1件 | Susquehanna Pacific Pty Ltd |
| 令和8年7月 | 1件 | Qube Research & Technologies Singapore Pte. Ltd. |
ここに名前がある会社は、名前を使われた実在の高速取引行為者で、被害を受けた側です。この会社が詐欺をしているのではありません。業者名の欄は「不明」で、実際に勧誘している者は分かっていません。区分は「国内」ですが、金融庁は「所在地等が不明の業者は国内所在として区分している」と注記しています。
12件のうち11件の備考には、「高速取引行為者はIPO銘柄の配分に関与できないにもかかわらず、IPO銘柄の配分に関与している旨の虚偽の説明を行っていた」と書かれています。残る1件(Issar Limited)は、福岡財務支局の警告で、備考の内容が別です。個別の事案は、Susquehannaの記事に詳しく書いています。
本物の高速取引行為者か、どう確かめる?
関東財務局は、警告のページで次のように書いています(Susquehanna Pacific の警告の例)。
- 高速取引行為者が日本国内の一般の方へ投資勧誘を行うことは、法令上認められていません
- 金融庁や財務局が、個別の金融商品取引業者や高速取引行為者と業務提携することはありません
- 登録の有無は確認できる
金融庁の「高速取引行為者の登録一覧」(令和8年9月29日現在)には、当社が数えたところ、関東財務局の登録が54者載っています。ただし、この一覧に名前がある会社と話していることの証明にはなりません。名前も番号も、書き写せるからです。そもそも、高速取引行為者が一般の人に「口座を開いて入金してください」と勧誘すること自体が、本物にはできないことです。
この記事で確認できなかった点は?
- 「PTS(私設取引システム)」や「ダークプール」という言葉そのものを、詐欺の文脈で名指しした金融庁・証券取引等監視委員会などの注意喚起(当社が確認した範囲では見つかりませんでした)
- リストの12件を勧誘した者の正体、被害の件数と金額(公的な資料に記載がありません)
- 12件が同じ運営者によるものかどうか(金融庁は個々の関係を示していません)
- IPOの配分に関わる、正規の業者の詳しい仕組み(この記事は、手口の見分け方に絞っています)
IPOの「特別枠」で入金してしまったら?
- 追加の入金をしない。「当選したので購入代金を」「口座の維持に追加で」と言われても払わない
- SNSやLINEのやり取り、相手の名乗った会社名・登録番号・口座、投資サイトの画面を、削除せず画像で保存する
- 振込先の口座や、暗号資産の送金先アドレスと、送金のTXIDを控える(TXIDの確認方法)
- 銀行振込で払った場合は、振込先の金融機関にすぐ連絡する(個人名義の口座への振込は特に急ぐ)
- 「お金を取り戻せる」と後から連絡してくる相手に注意する(二次被害の記事)
送金のTXIDや送金先のアドレス、やり取りの画面があれば、お金がどこへ送られたのかを調べられるかどうか、LINEでお答えします。「何を残せばいいか分からない」「TXIDの探し方が分からない」という段階でも構いません。
LINEで無料相談友だち追加のみで、こちらから電話をかけることはありません。ご相談は無料ですが、資金の回収・返金をお約束するものではありません。
- 金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」 — 高速取引行為者を騙る事例、特別待遇と思わせる事例、IPOの応募枠をめぐる事例、登録番号の詐称(2026年10月7日確認)
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」 — 令和8年9月25日更新。高速取引行為者の商号等を詐称した警告12件と、備考のIPO銘柄の配分に関する虚偽説明(2026年10月7日確認)
- 関東財務局「無登録で金融商品取引業等を行う者について(不明(高速取引行為者Susquehanna Pacific Pty Ltdの商号等を詐称))」 — 「高速取引行為者を詐称する者に注意!」の注意事項(2026年10月7日確認)
- 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」 — 高速取引行為者の登録一覧(令和8年9月29日現在)を確認(2026年10月7日確認)
2026年10月7日時点の公開情報にもとづいています。表に名前の出る高速取引行為者は、名前を使われた側であり、この記事は各社を詐欺と指摘するものではありません。件数は当社が金融庁のリストを数えたもので、公式の集計値ではありません。
この記事は、公的機関の公表資料、各サービスの公式サイトの表示、報道など、公開されている情報をもとにまとめたものです。利用者の声として紹介している内容は第三者の報告で、当社が個々の事実関係を確認したものではありません。記載内容の誤りのご指摘や、当事者の方からの訂正・削除のご依頼は、お問い合わせからご連絡ください。確認のうえ対応します。
IPOの特別枠・優先割当をうたう投資詐欺に関するよくある質問
「IPO株を優先的に買える特別枠がある」と勧められました。本当ですか?
当社は詐欺の可能性が極めて高いと考えます。金融庁は、IPO銘柄の取引勧誘や「選ばれた人だけの口座」で誘う手口を注意喚起で示しており、リストでも、高速取引行為者がIPOの配分に関与できないのに関与していると偽った例を警告しています。
相手が「高速取引行為者の登録番号」を見せてきました。本物ではないのですか?
番号は本物でも、名乗っている相手が本人とは限りません。関東財務局は、登録を受けていない者が、高速取引行為者の商号や登録番号を騙っている例があると警告しています。高速取引行為者が一般の方に投資勧誘すること自体が、法令上認められていません。
名前が出ている高速取引行為者は、詐欺をしている会社ですか?
いいえ。金融庁のリストに名前が出ているのは、商号を詐称された側の実在の会社です。勧誘している者は、業者名の欄が「不明」とされており、正体は分かっていません。
もう入金してしまいました。何をすればいいですか?
追加の入金はせず、相手とのやり取りと投資サイトの画面を削除せず保存し、振込先の口座や暗号資産の送金先アドレス、送金のTXIDを控えてください。「取り戻せる」と連絡してくる相手には注意が必要です。
送金先の追跡を相談・依頼する
トランザクションハッシュと送金先アドレスがあれば、オンラインで調査を依頼できます。1件¥9,800、最短翌日。 申し込む前に、自分のケースが調査できるかをLINEで相談することもできます(相談は無料です)。
調査の仕組みと料金は、仮想通貨詐欺の調査会社「CryptoTracer」のサービス紹介で詳しくご覧いただけます。