カンボジアなど海外の詐欺拠点とは?警察庁・外務省・国連が示す実態
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警察庁は、令和7年中に、海外の拠点を外国当局が摘発し、日本に移送等して検挙した人数を、54人と公表しています。当社が表から国別に集計すると、カンボジア32人、フィリピン9人、マレーシア7人、タイ6人でした。令和7年5月には、日本警察の提供した情報をもとにカンボジア当局が拠点を摘発し、日本人29人を確保、8月に全員を日本へ移送して逮捕しています。
この54人は、特殊詐欺(警察官等をかたるものなど)の海外拠点に関連する数字で、「暗号資産の被害金が、海外拠点に流れた」と警察庁が明記したものではありません。外務省・国連の資料は、「簡単に稼げる仕事」と誘われて渡航し、パスポートを取り上げられて詐欺に従事させられる人への警告が中心で、国連は、強いられる詐欺に暗号資産の投資詐欺が含まれると書いています。
「あの詐欺グループは、カンボジアにいるらしい」——被害に遭った人の中には、そう聞いた人もいるはずです。この記事では、警察庁、外務省、在カンボジア日本国大使館、国連薬物犯罪事務所(UNODC)の資料を当社が直接確かめて、公的機関が確認していることと、確認していないことを分けて整理します。
警察庁は、海外の詐欺拠点について何と言っている?
警察庁が2026年6月に公表した、令和7年の確定値の資料(資料1のPDF)には、「海外拠点を外国当局が摘発し、日本に移送等して検挙した人数については、同年中54人(+4人、+8.0%)」と書かれています。当社が2026年10月16日に、原文のPDFを確認しました。
| 国 | 検挙した人数 | 資料にある罪名(例) |
|---|---|---|
| カンボジア | 32人 | 詐欺、詐欺未遂、窃盗、組織的犯罪処罰法違反(組織的詐欺) |
| フィリピン | 9人 | 窃盗 |
| マレーシア | 7人 | 詐欺 |
| タイ | 6人 | 詐欺・詐欺未遂 |
| 合計 | 54人 | — |
警察庁の資料の「主な検挙事件」には、令和7年5月に、日本警察が提供した拠点の情報をもとに、カンボジア当局が拠点を摘発し、日本人計29人を確保したことが載っています。8月に全員をチャーター機で日本国内に移送して、特殊詐欺(オレオレ詐欺)事件で逮捕し、10月には国内にいた関係者2人も逮捕したとされています。また、8月にはマレーシア当局が拠点を摘発して日本人4人を確保し、10月に移送して逮捕しました。
ここで大事なのは、この54人が、特殊詐欺の海外拠点に関連する数字だという点です。警察庁の資料では、警察官等をかたる特殊詐欺が、海外拠点から実行されていると説明されています。SNS型投資詐欺の被害金が海外拠点に流れた、という警察庁の明文は、当社が確認した範囲では見当たりませんでした。警察庁の統計で、被疑者が名乗った身分の「地域」に、海外(東アジアなど)が含まれることは書かれていますが、これは名乗りで、実際の所在地ではありません。
なぜ、日本人が拠点で働いているの?
警察庁のトピックスには、リクルーターとみられる者が、「海外で簡単に稼げる仕事がある」等の口実で、犯罪実行者を募集し、応募した者が渡航して、犯行に加担させられるケースがあると書かれています。拠点で働いていた人からは、次のような供述が得られているとされています。
- 「パスポートとスマホを取り上げられ、帰るなら数百万払えと言われた。」
- 「詐欺をやりたくないと言うと、『臓器を売るぞ』、『家族を殺す』等と脅された。」
- ミスをしたり、管理者の指示どおりにやらなかったりすると、暴力を受けた(ひどいときは火をつけられた、という供述もあります)
外務省の海外安全ホームページ(2025年12月16日)も、海外の「闇バイト」に応募して、「かけ子」として特殊詐欺に加担させられるケースが続いていると注意しています。未成年者が加担させられる例や、組織内で暴行を受ける例もあり、「海外であっても、犯罪行為に対する刑罰は免れません」と書いています。
在カンボジア日本国大使館の注意喚起(令和4年8月26日)は、「好条件の仕事がある」と誘われてカンボジアに渡った人が、到着直後に旅券や連絡手段を取り上げられ、監禁状態に置かれて、不法行為に従事させられる事案を挙げています。共通の特徴として、知人や親族から、カンボジアで条件のいい短期の仕事があると紹介されること、到着直後に旅券や携帯電話を取り上げられ、監視付きの施設に移されることが書かれています。
国連は、何と言っている?
国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、2026年7月の報告で、次のように書いています(英語の原文を、当社が日本語に要約しました)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 損失の推計 | 東アジア・東南アジア・豪州・ニュージーランド全体の詐欺による年間損失は、2025年だけで883億〜1,141億米ドルと推計 |
| 拠点で確認された人の国籍 | 少なくとも80か国・地域の人が、地域の詐欺拠点で確認されている |
| 閉じ込められている人 | 東南アジアの詐欺センターに、30万人超が閉じ込められているとされる。従業員ではなく、人身取引の被害者 |
| 強いられる詐欺の種類 | 暗号資産投資詐欺、偽の取引プラットフォーム、オンライン賭博、ロマンス詐欺、電子商取引詐欺、違法な賭博など |
つまり、拠点で詐欺をさせられている人の多くは、「加害者」である前に、「被害者」の面を持つというのが、国連の整理です。これは、日本の被害者に起きた被害が、どこで起きたかを示すものではなく、東南アジアの詐欺拠点全体についての説明です。
暗号資産の被害者は、何を知っておくべき?
- 詐欺グループが「海外にいる」ことと、お金が海外に流れたことは、別の話です。国内の口座や、国内の暗号資産交換業者を経由する資金の流れもあります
- 日本の警察は、海外の当局と連携して、拠点の摘発や、日本への移送・逮捕を進めています。警察庁は、海外拠点の摘発につながる情報の収集・分析を強化するとしています
- 「海外の拠点だから、取り戻せない」とは、言い切れません。資金の流れが、国内の口座や、登録を受けた国内の事業者を通る場合もあるためです。流れは、記録がある間に控えておくことが大切です
- 被害金の行き先や、犯人の居場所は、被害者本人が調べて特定できるものではありません。当社も、犯人の特定や居場所の特定は行いません
この記事で確認できなかった点は?
- 「SNS型投資詐欺の被害金が、海外拠点に流れた」という警察庁の明文
- フィリピン・マレーシアの拠点が、暗号資産の詐欺を行っていたという公的な文言(警察庁の表では、フィリピンは「窃盗」、マレーシアは「詐欺」の罪名が並ぶだけです)
- 米国政府(FBI)の暗号資産投資詐欺の統計(公式ページが、ボット対策のため、当社の環境では開けませんでした)
- 在カンボジア日本国大使館の注意喚起の、最新の更新(当社が確認したページは、令和4年8月26日付です)
海外の「簡単な仕事」「儲かる投資」に誘われたら?
- 海外の仕事の誘いには、応じない。外務省は、短期間で多額の報酬が得られる海外の仕事に、注意を促しています。知人や親族からの紹介でも同じです
- 投資の勧誘で、「海外の拠点」「海外の取引所」と言われたら、日本の登録の有無を確かめる(仮想通貨詐欺の見分け方、ドバイの免許の記事)
- すでに送金してしまった場合は、送金のTXIDと送金先のアドレスを控える(TXIDの確認方法)。銀行振込は、振込先の金融機関に連絡する
- 相手とのやり取り、サイトの画面を、削除せず保存する
- 「取り戻せる」と後から連絡してくる相手に注意する(二次被害の記事)
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- 警察庁・SOS47「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」 — 海外拠点の検挙54人、主な検挙事件、トピックス3(資料1のPDF)。2026年10月16日確認
- 外務省 海外安全ホームページ「広域情報」(闇バイトに関する注意喚起) — 2025年12月16日。海外の闇バイトへの注意。2026年10月16日確認
- 在カンボジア日本国大使館「就労斡旋を騙り不法行為や強制労働に従事させる監禁事案に関する注意喚起」 — 令和4年8月26日。好条件の仕事、旅券の取り上げ。2026年10月16日確認
- UNODC「New UNODC report reveals scale of South-East Asia's ever more interconnected criminal economy」 — 2026年7月21日。損失の推計、80か国・地域(英語)。2026年10月16日確認
- UNODC「Forced to scam: Inside one of the fastest-growing forms of human trafficking」 — 2026年7月。30万人超、強いられる詐欺の種類(英語)。2026年10月16日確認
2026年10月16日時点の公開情報にもとづいています。警察庁の数字は、特殊詐欺の海外拠点に関連する人数です。国別の内訳は、警察庁の表から当社が集計しました。英語の原文は、当社が日本語に要約しました。
海外の詐欺拠点に関するよくある質問
カンボジアの詐欺拠点で、日本人が逮捕された例はありますか?
警察庁の令和7年の資料によると、5月に、日本警察が提供した情報をもとにカンボジア当局が拠点を摘発し、日本人29人を確保しました。8月に全員を日本へ移送し、特殊詐欺事件で逮捕したとされています。令和7年中の海外拠点関連の検挙は54人で、国別ではカンボジアが32人でした(当社の集計)。
なぜ、日本人が海外の拠点で詐欺に加わるのですか?
警察庁は、リクルーターとみられる者が「海外で簡単に稼げる仕事がある」等の口実で募集し、応募者が渡航して加担させられるケースがあると書いています。拠点で働いていた人からは、パスポートとスマホを取り上げられた、脅されたなどの供述が得られているとされています。
暗号資産の投資詐欺は、海外の拠点が行っているのですか?
国連のUNODCは、東南アジアの詐欺センターで強いられる詐欺に、暗号資産投資詐欺が含まれると書いています。ただし、日本の被害金が海外拠点に流れたという警察庁の明文は、当社が確認した範囲では見当たりませんでした。個別の被害の行き先は、この記事では判断できません。
海外の拠点が関係していると、お金は取り戻せませんか?
言い切れません。資金の流れが国内の口座や登録を受けた国内の事業者を通る場合もあります。当社は、公開されているブロックチェーンの情報だけをもとに、送金の流れを整理した報告書を作成しますが、資金の回収や返金はお約束しません。送金のTXIDと送金先のアドレスを控えておいてください。
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